TIPS950〜目指す場所

950.セバスチャン・サルガドをご存知ですか?
ブラジル出身の世界的な報道写真家です。
ぜひ、その作品をじっくりご覧ください。




大自然の驚異や、そこに暮らす原住民の洗練された生活が、圧倒的なモノクロの階調表現で描写されています。
よくモノクロは色を想像させるといいますが、そんなレベルをはるかに超えてそこにある地球を想像させる。
こんな写真が撮れることを知ってほしいですし、もちろん同じ場所に行けるわけではありませんが、サルガドが持っているカメラと同じことができる機械をみんな持っていることを知ってほしいのです。

そう言うと、自分の持っているカメラは安い入門機だから同じじゃない…という方がいますが、こうした圧倒的な表現力の写真にカメラの性能はあまり関係ありません。
カメラが写真を撮るのではない…ということを、肝に銘じてください。
また、そう言うと、カメラはともかく、そのレンズでないと撮れない写真もある…という方がいますよね。
確かにレンズで決まる画角や表現できるイメージがありますが、圧倒的な被写体を前にしてどんなレンズであれ撮れるイメージはあります。
まあ、望遠レンズしか持っていない…なんて方は少ないと思いますので、ほとんどの方が持っている標準ズームでどう撮るか…!
超広角がほしいと思ったときに標準ズームでどう撮ればよいか…。
イメージ力と行動力…と言うことになってきます。
サルガドが撮るような写真と同じものを作れ…というわけではありません。
上手い人の写真を真似ることは重要なのですが、それはちゃんとどのようにして撮ったのかを分析すること。
やみくもに真似しても駄目ということですよね。
多分これは超広角のレンズで撮ってるから、自分の持ってるズームの広角端で行こうとすると画角が狭くなるので、よりローアングルにして空を広く取ろう…とかね。

見せたいもの、伝えたいものが何かをはっきりさせ、浮かぶイメージに重ね合わせ、画面の中でバランスや気持ちよさを発見するようにデザインする…。
いつも言ってるように、イメージが浮かばないと写真は撮れません。
そのイメージは記憶からくるもの。
今まで見てきたいろんな情景が思い浮かぶはずです。
そしてその中でひときわ印象的なイメージは…。
心に残っている衝撃をうけた写真たちですね。
その中にはサルガドの写真があったり、友人が撮った写真があったり、写真だけではなく映画のワンシーンだったり、アニメの一コマだったり、美術館の絵画かもしれません。
間違いなくあなたが感動した写真や映像たちは、記憶の中にあり頭の中のイメージの引き出しに格納されているはずです。
そして、それがどれだけ多彩で豊富に様々なパターンが格納されているか…?
これがイメージ力ということになります。

そう、過去に見たことがあるイメージだから現実味があり、それを元に創造することができる。
見たことがないとなかなか思い浮かばないのですよね。
そしてそにメージの記憶が重なり、新たなイメージも湧いてくる。
いくつかののイメージが混じり合って、何か、何処かに関連性やパーツの一部が存在するはずです。
ですので、見たことがないものは思い浮かびません。
良く、見たことがないものは見えない…と言ってます。
そうしてみんな見過ごしてしまう絶景はたくさんあるのですよね。
さらに、いつもよく見ているものもだんだん見えなくなってきます。
無意識に見る…というところに落ち込んでいくのですね。
絶景は日常の中にある…。
意識して見る、イメージを持つ、たくさんの映像や写真、絵画を見てください。
街を歩いているときの風景も大事です。
四角く切り取るイメージとして見ていますか?
写真に撮るとしたら…、そういう見方、意識する見方です。

サルガドの写真には、光と影、その影の中にグラデーションが表現されています。
その被写体は世界各地の大自然だったり、そこに住む原住民だったりするわけですが、そのイメージをもらっちゃいましょう。
それはどこかで似たような被写体を見たときに、思い出すことになるかもしれません。
なかなかこの思い出す作業ができないのですけどね…!
でも、何処かで記憶の中にあるイメージはあなたの作品の中に存在します。
適当に撮るのではなく、じっくり考えて撮りましょう。
それだけ現場には長くいることになるはずです。
じっくりと被写体と向かい合う時間が必要なのです。
イメージを再生する時間です。
今のデジカメは大容量のメモリー高速連写でとても簡単に大量の写真を撮ることができます。
そしてSNSでは大量の写真が消費され、巷には動画が溢れ、TVは同じような映像を垂れ流している。
そうした現代の映像の浪費とは対局にある、一つの写真作品を創造する作業に没頭しましょう。
最近フィルムで撮る方も多くなり、富士フィルムは新しくモノクロフィルムを発売する事になりましたが、フィルムが本格的に復活する兆しなのでしょうか?
フィルムで写真を撮るということは、まさに作品作り。
シャッターを押す指に思いを込める…、デジタルとは撮り方が変わってきます。
デジタルでは撮れない写真が撮れるはず!フィルムという選択肢もあって良いと思いますね。

サルガドはデジタルで撮影しても、一旦それをフィルムに焼き付けるそうです。
逆はよくやりますが、デジタルをわざわざフィルムに変換するなんて、あまり聞きません。
やはりフィルムにしか出せない階調感やプリントしたときの発色の違いがあるのですよね。
サルガドの写真はモノクロが多いですが、特にモノクロの階調…(白から黒のグラデーションの段階)は無段階なわけですよね。
1,0の数値ですべてを表現しなければならないデジタルに、無段階はありません。
どうしてもデジタルがアナログを超えられないポイントですね。
最近、音楽の世界ではアナログレコードがどんどん復活してますので、写真もそうなることを願います。
アナログレコードの大きなジャケットやライナーノーツ、そしてレコードプレーヤーやピックアップ(レコードから音を拾う針のついた部品)の文化があったように、フィルムにもネガやコンタクトプリント(ベタ焼き)、暗室の中でプリントするという工程…、そこには写真にしかない文化があります。
じっくりサルガドの写真を見て、その写真にかけた思いを感じてください。
十分に伝わってくるはずです。
そしてそんな写真が撮れる道具は、あなたの手元にあるカメラなのですよね!





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